応接間
応接間
 ▲暖炉、ステンドグラスのあるドア。照明は当時の復元
応接間
 ▲食堂から洋間を見る

 いったいこの家は大部分が日本間で、洋間と云うのは、食堂と応接間と二た間つづきになった部屋があるだけであったが、家族は自分達が団欒(まどい)をするにも、来客に接するのにも洋間を使い、一日の大部分をそこで過ごすようにしていた。それに応接間の方には、ピアノやラジオ蓄音機があり、冬は暖炉に薪を燃やすようにしてあったので、寒い時分になると一層皆が其方にばかり集ってしまい、自然そこが一番賑やかであるところから、悦子も、階下に来客が立てこむ時とか、病気で臥る時とかの外は、夜でなければめったに二階の自分の部屋へは上って行かないで、洋間で暮した。二階の彼女の部屋と云うものも、日本間に西洋家具の一揃が備えてあって、寝室と勉強部屋を兼ねるようにしてあったのだけれども、悦子は勉強するのにも、ままごと遊びをするのにも、応接間ですることを好み、いつも学校用品やままごとの道具をそこら一杯散らかしているので、不意に来客があったりすると、よく大騒ぎをすることがあった。(細雪上巻八章)

 そう云えば、先日から数回、いつも悦子が寝てしまってから、夜の十時過ぎ頃に、貞之助、幸子、雪子、時には妙子も加わって、応接間で今日の見合いのことについて相談したことがあり、そこへお春が時々飲み物などを運ぶのに、食堂を通って這入って来たが、その食堂と応接間の境界は三枚の引き戸になっていて、戸と戸の間が指が入れられる程透いているとことから、食堂にいると応接間の話し声の語尾が可なりよく聞こえるのであった。(細雪上巻九章)


 「細雪」の家族が一番よく利用する「洋間」は広さ十畳、北側のドアの左側にマントルピースがある。倚松庵の心臓部ともいえるこの部屋は、「細雪」の中でも一番よく出てくる場所である。家族の団欒、来客の応対は主としてここで行なわれ、蒔岡家の「陽」なる部分の象徴になっている。
 中巻の冒頭の第二、第三章では、食堂に続く三枚の引き戸が取り払われた「ニた間つづきの洋間」で、山村舞のお浚い会が催され、妙子が着物姿で「雪」を舞う。妙子の巻とも言うべき中巻の、華やかな幕開けである。



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案 内
2 階 幸子の部屋 | 悦子の部屋 | こいさんの部屋 
1 階 応接間 | 西の部屋 | 風呂・食堂・台所・廊下

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